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コラム

定期売却の落とし穴

前回のコラムにて、運用しながら取り崩していけば、使えるお金(利益)を増やしていくことができるとお伝えしました。
そのためにも、売却は「お金が必要になった時に、必要な金額のみ売却して、残りは運用を続ける」ことをお勧めしていますが、年齢の高いお客様から「定期で売却する方法を設けてほしい」とのご要望をいただくことがあります。現在ユニオン投信では定期売却のしくみを設けていませんが、定年後に資産を取り崩して生活するようになると、都度売却するより定期的に自動売却(換金)される方が手続きが楽で良い、というのがご要望の理由です。
確かに手間は掛からなくなりますが、それだけで選んでよいのでしょうか?
今回は、この定期売却について考えてみたいと思います。

定期売却には、3つの方法がある

定期的に取り崩していく方法には、以下の3つのやり方があります。
① 定額売却 毎月一定金額を売却していく方法
② 定口売却 毎月一定の口数を売却していく方法、売却開始時に期間を決めて売却することになります
③ 定率売却 毎月保有残高の一定割合(比率%)分を売却していく方法

これら3つの方法で、基準価額が上下する中で定期的に売却を進めたらどうなるかを見てみましょう。

前提条件は以下の通りです。
・基準価額の期間中の平均リターンは1.5%/回、10回目と30回目を境に上昇/下落が切り替わる
・初回売却額が25,000円となるように設定する
・結果の算出にあたっては、税金は加味しない

結果は以下の通りとなりました。
このシミュレーションを元に、3つの定期売却方法の特徴を整理すると、以下のようになります。

① 定額売却
売却金額が一定のため、生活費の補填など継続的に取り崩す場合には設定しやすい。
右のケースの最大売却口数が第1回の1.4倍にもなっているように、基準価額が下落した時の売却口数が大きくなり、資産寿命を短くする恐れがある。基準価額の暴落や下落局面が続いた場合には、特に注意が必要(受取総額が初期資産額を下回る恐れもある)。

② 定口売却
設定する比率により取り崩し期間が決まり、資産寿命を延ばすことはできないが期間短縮も発生しない(確実にその期間受け取れる)。
基準価額の変動により売却金額が増減し、金額変動幅は3種類の中で最大。運用状況が良いと、終盤に受取金額が当初設定金額よりはるかに大きくなる可能性がある。

③ 定率売却
徐々に売却量(口数)を減らしていくので、資産寿命を延ばすには有効。
時間の経過とともに売却量(口数)は減少していき、基準価額は上昇方向となるので、先々の受取金額の想定が難しく、設定比率を決めづらい(必要金額で設定するとズレが出やすい)。同一期間中の受取額が3種類の中では最も小さくなることが多く、逆に受取総額と最終残高の合計は最も大きくなりやすい。

どのやり方にも一長一短があり、どの方法がベストだと言うことはできません。
実際に利用するにあたっては、それぞれの特徴を踏まえて自分の目的に最も合う方法を選択するのが良いでしょう。
どの方法においても、価格変動の影響を抑えて受取総額を上げるには、受取期間を長期で設定した方が良いのは共通です。余分な現金を持つとつい使ってしまいがちですので、設定を低めに抑えて期間を長くする方が良いと思います。

手間より気持ちが楽な方法を

定期売却のどの方法を利用しても、受取総額をより大きくしたいなら状況を見ながら臨機応変に一時中断や条件変更をする必要があります。口数の大量売却が続けば資産を大きく目減りさせてしまうので、そのまま続けるのは得策ではありません。また、必要金額より受取額が大幅に下がれば追加で換金せざるを得ないでしょうし、大幅に増額となってせっかく“働いているお金”を増えない預貯金にどんどん変えてしまうのももったいない話です。
楽に続けられる長期つみたて“ほったらかし”投資ですが、売却に関しては“ほったらかし”は賢い選択とはいえないようです。
以上を踏まえると、売却はやはり『お金が必要になった時に、必要な金額のみ売却する』のが良いと私は思います。
不安を感じたり、感情が揺さぶられたりするのは、誰にとっても辛いことです。定期的にお金が振り込まれても、先が読めない基準価額の変動や資産額の減り方をいつも心配していなければならないのなら、決して楽とは言えません。そこが、死ぬまでほぼ一定額をもらい続ければよい公的年金とは大きく異なるところです。
それなら、いっそそんな事は考えずに使うお金だけを下ろすことにして、今それが本当に必要かどうかを考える方が悩みは少ない気がします。また、単純に評価損益の状況を見て、厳しいと思う時には使わず、状況が良いと思う時には「たまにはちょっと贅沢でも・・・」といつもより多めに売却したりするなど、その都度考えた方が簡単だったりします。
自分にとって必要最小限の金額のみ売却することは、悩んだり考えたりする事が少なくて済みます。それでいて資産寿命を延ばす観点では、結構理にかなった売却の調整になっていたりします。
行動や感情に負担をかける(不安を抱える)ことなく、効果的に口数減少が抑えられて資産寿命が延びる。さらに、時に自分の楽しみにお金を遣って人生を充実させることができるのであれば、資産運用における理想的な姿と言えるのではないでしょうか。
そのために売却にちょっと手間を掛けるのは、決して大変なことではないと私は思いますが、いかがでしょう。
(赤津 正)
  • このコラムは、掲載時点での意見・見通し等であり、将来の運用成果や市場環境等の変動を保証するものではなく、将来予告なしに変更することがあります。
  • 金融商品等への投資は、その価格の変動等により損失を生じることがあります。
  • 金融商品等ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、目論見書等をよくお読みいただき、ご自身でご判断ください。
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